中小企業等経営強化法の証明書発行工業会(電子商品監視機器、防犯カメラ)へ・・・防犯民主主義の実現、攻めの防犯のために・・・

日本万引防止システム協会(略称:JEAS) 事務局次長
稲本義範

座していないで歩くとき・船出するとき
谷津田(やつだ)とは谷地にある田んぼのことである。国道408を東に進み国道6号を過ぎると両側を里山に囲まれた谷津田が連なる道となる。道沿いのひとつひとつの谷には古くからの集落がある。これらの谷は人々と自然がともに暮らした場所である。まわりの森から湧き出る清らかな水は川に集まり、大きな沼に注ぐ。土地の人はこの川を愛着込めてカッパの道と呼ぶ。その川と離れ正直町の交差点を左折すると高さ120メートルの大仏に出会える。
その横手にはアウトレットモールが広がっており、東京や千葉からもやってきた多くの人々が買い物を楽しんでいる。このモールのメインストリートからは大仏の横顔がよく見える。今にもこちらを向いて歩いてきそうな感じだ。おそらくこの場所では生半可な気持ちで万引などの悪事はできまい。なぜなら大仏が時に保安員のようにこちらを監視し、時に阿弥陀仏の温かな眼差しを向けてくるから。
ブッダがそうであったように、立っている大仏は、座って修行をして人々を救済する方法を悟り、その方法をみんなに広めようと立って歩いているのだという。目の前にそびえる裸足で、ぼろ布だけをまとい風雪のなかを歩こうとする世界一の大仏が私に何かを語るかけくる。「万引という社会病理から人々を救うためには、座しているだけではダメ。皆の心がひとつになるよう私とともに歩きだしなさい。船出しなさい。」と言っている。そのような光明を感じた。

座ったまま?の現状の体制
1月26日に「万引総額1400万円余か」というニュースが流れた。アイドルのコンサートに行くための交通費などにあてるため、広島市や新潟市で万引きを繰り返したなどとして高校生や大学生を含む16歳から19歳の少年7人が窃盗などの疑いで逮捕され、被害総額は1400万円余りに上るという。このうち19歳の大学生がインターネットで商品を転売していたとみている」という。また都内の小学校では前年比で万引による補導件数が増えており、年明けに緊急の対策会議が関係者間で持たれた。
このように、昨今大きな社会問題として取り上げられている万引犯罪だが、我が国の刑法犯認知件数がピークの平成14年の285万件が平成29年には91万件、半減以下となる中で、万引犯罪の認知件数は14万件/平成14年から11万件/平成29年へと減少傾向は弱く、その構成比は全刑法犯認知件数の4.9%から11.8%に増加している。また犯罪特性としても高齢者犯罪の増加や組織的万引による高額被害事案の増加など、万引犯罪の複雑化、悪質化が目立ってきている。全検挙者数に占める万引検挙者数は30.8%に達し、万引の再犯率は、昭和48 年には10%だったものが平成27 年には51.9%となった。
この対策として、再犯の防止などの推進に関する法律が平成28年12月14日に公布,施行されるに至った。しかしながら、平成29年12月15日閣議決定された「再犯防止推進計画について」では万引の再犯対策の記載は無かった。残念ながら「万引」は一文字も無かった。米国で効果を上げているような早い段階の万引防止プログラムや民事賠償請求が実現化できればと思う。僭越ながら、首相には、出所後の立ち直り支援だけがおもな再犯防止ではない。その前の対応こそが重要なのだ。と強くお願いしたい。

昨年12月21日には、「古物営業、規制緩和へ フリマアプリは当面対象外」というニュースが流れた。中古品などを取引する「古物営業」について、警察庁の有識者会議は21日、規制緩和に向けた報告書をまとめた。会議では盗品などの不正な出品が問題となったインターネット上のフリーマーケットアプリなどについても議論。規制を求める意見も出たが、大手のメルカリが12月から出品者の本人確認などの自主対策を強化したことから、まずは状況を見守り、効果がみられない場合に法規制を検討すべきだとした。
年明け1月5日に「カーナビ盗、再び横行 ロック解除パスワード出回る?」というニュースが流れた。ネットオークションで「ナビロック解除最短40秒」という“商品”が出品されている。出品者に1,200円程度の代金を支払えば、パスワードを提示するという内容だ。不可解なことに、日本には米国のような官民合同のネット転売(盗品の換金化・ポイント化)の監視体制が無い。米国eBayのレポート画面上では、盗品情報を通報することができるが日本ではそのような取り組みがされていない。それがこのような状況を作り出している。監視体制や管理数値を決めもせず、規制改革の旗印の下、事業者の自主規制に頼る方々が、大仏殿(会議室)で座ったまま行動を起こさない大仏(為政者)に見えた。

ロスプリベンションを推進するための2つの考え方
中小の小売業の方々から「万引防止機や防犯カメラを入れたいが、ウチにはそんな余裕は無いから」と言われる。多くの場合、このような対策の違いがその後の利益率の格差を生む。ロスプリベンションが後手に回らないためにも小さくても対策を進める必要がある。そのための前提が「防犯民主主義」と「攻めの防犯」である。
防犯民主主義とは、一部特権階級のみが享受できる安全安心を、国民大衆が毎日の暮らしで実現できるよう、経済面や社会面の仕組みづくりに努力することである。つまり、防犯面において誰も置き去りにしないということ。対策面においても必要情報を関係者で共有することが防犯民主主義である。ある店が万引を減らしたとしても、他の店が改善できなければ、万引は無くならない。また改善できたと思われていた店舗も再度被害に遭う。皆でレベルを上げなければ万引犯罪は減少へと向かわないから。
攻めの防犯とは、捕まる可能性があると相手に思わせる方法を考え、捕まる危険を犯罪者に通知することで捕まるリスクが高いというプレッシャーを与えることで、犯罪行為を抑止すること。例えば『防犯カメラ作動中』とわかる場所に書いてあったり、色もカラフルだったり、撮られているのがはっきりとわかると、犯罪者は実行できる自信があっても捕まる恐れがあれば実行を躊躇する。

電子商品監視機器と防犯カメラの工業会へ
昨年の11月の末、JEAS会員の営業マンが「ユーザーが電子商品監視機器(以下EAS)を導入するので中小企業等経営強化法の経営力向上設備等に係る仕様等の証明書(A類型)を発行できないですか?」と質問してきた。営業マンには、JEASは経産省から工業会として認められていないので証明書は発行できない。なので証明書が不要なB類型をお勧めするようにお願いした。その電話を切った後で、この制度の相談窓口に電話をした。不慣れな方だったので、じかに担当の中小企業庁事業環境部企画課課長補佐太刀川徹様に連絡した。そこで以下の点を説明し工業会として認めていただけるようお願いした。
・外部調査機関の調べではEASの不明ロス率の改善率は導入後30%以上削減:34.3%、20%以上削減:48.6%、平均削減率:23.7%であり、店舗の生産性と利益率を向上させていること。
・2015年3月のセキュリティソリューションステージで経済産業省 経済産業政策局 産業再生課課長補佐 矢口雅麗様(当時)に「生産性向上設備投資促進税制(B類型)を活用したセキュリティシステムの導入」に関するセミナーをJEASが企画したこと。その際、工業会として登録していただけるようお願いしたこと。
・2016年6月JEAS通常総会に中小企業庁長官豊永厚志様(当時)が突然お越しになり激励を受けたこと。豊永氏には経産省の審議官時代から「万引オタク君か。万引問題はその損失の額も含めて大変な社会問題だ。頑張るように。」と応援いただいていたこと。
・JEASの監督官庁は経済産業省 商務・情報政策局 情報産業課(旧 情報通信機器課)であること。医療機器との干渉対策であるEASステッカー貼付事業などの安全対策を長年やっており評価いただいていること。
などを説明した。その後も打ち合わせを行った。
その結果、1月25日JEAS理事会は工業会活動の承認し、同日ご担当の太刀川徹課長補佐を講師に招聘しての勉強会を開催した。2月1日より本証明書(電子商品監視機器と防犯カメラの発行)の受付をスタートした。工業会として自ら立ち上がり歩き始めた。詳しくはJEASのHPを参照されたい。

振り返ると「攻めの防犯」と「防犯民主主義」を実現するために、経産省関係の方々はあの大仏のように私たちに近づいて来てくれた。さらに下記のセミナーでも経産省消費・流通政策課のご担当者がご登壇いただく予定になっている。その志に厚くお礼を申し上げたい。
1月26日今回のきっかけとなった営業マンに、工業会となったことを伝えた。彼は「正直、A類型は無理だと諦めていました。」と言い。さらに「別のユーザーからもお願いされていたので、嬉しいです。」と弾んだ声を返してきた。私は雪が降り続く今日もロス対策のために走り回っている会員に寄り添うことが事務局の使命だと再認識した。

日本万引防止システム協会(JEAS)
http://www.jeas.gr.jp