「やけくそ万防日記」の連載を始めるにあたって       全国万引犯罪防止機構理事長 竹花 豊

今日から、1週間に一度、ホームページに表題の日記を掲載させていただくことにしました。
なぜ、「やけくそ」なのか、万引防止を投げてしまうというニュアンスもあるのですが、それは違います。確かに、私が目標としている到達点にはなかなか行き着かず、また、予算、人員等の当機構の強化にはなかなかめどが立たないなど、ほとほと疲れるなと思うことも多いのですが、他方で、着実に実を結んでいることもあり、今年は新しい成果が顕著に見える希望の年になるのではと思ってもいるのです。
では、なぜそんな名前をと思われるかもしれませんが、実は、「万引き家族」という映画が評判を呼び、万引問題に関心が集まってきたのではないか、この機を逃さず、万引きを題材にした本を作り、皆さんに広く読んでもらい、万引き問題の解決に弾みをつけよう、あわよくば万防機構の資金にもなればと思い、いろいろ考えて、「万引きが教える社会の真実」と題するレジュメを作り、昨年の8月頃、ある出版社に持ち込んだのです。
ところが、どうも反応がよろしくない。売れるとは思っておられないようで、良くお考え下さり、どうすれば可能性があるか誠実にご検討いただいたのですが、結局話はまとまりませんでした。
どうも、この本に興味を持って読むのは誰かが良くわからない、本を買ってまで読もうという人はあまりいないだろうということのようでした。確かに、普通の人がこれを読んで自分を高めようとか、これは娯楽ものとして面白いというようなものではないのはわかるが、万引きに関わる人は少なくない、それに万引問題は、誰にとっても知れば知るほど興味深い、こんなことがあるのか、それは許されないだろう、お前たちもっとしっかりやらんかといったことが次々にでてくるのに、と思わずにいられませんでした。
でも、編集者の心を捉えられない理由は何だろうと考え込んでしまいました。やはり、万引きはさしたることのない出来事であるのか?取返しのつかない事案で、誰もが自分も被害者になるかもしれない、それは避けたいと思い、興味を持って知ろうとするものなら別段、万引はどうだ?万引きしない多くの方々が、万引問題を自分とは関係のないことだと無関心でいるのは当たり前か?それに被害者もある程度は我慢できるはずで、万引きで会社がつぶれるわけでもないと思われているのかな?
その反映か、万引きが世情で取り上げられるのは、万引きに怒った店舗の方が、例えば、防犯カメラで録画した犯人の映像をウェブに載せ、「万引きしたものをすぐ返さないと顔のモザイクを取ってしまうぞ」と発信することが許されるのかとか、防犯カメラの顔認証機能を利用して犯人情報を活用することの是非とか、万引本体ではなく、その対策が万引犯ではない多くの方々に何らかの影響を持つかもしれないという場合が大半ですね。万引き自体を大きな社会問題としてとらえ、これをなくそうとか、そうしなければ社会がおかしくなるとかいった視点からの記事は業界紙以外ではほとんど見当たらないですね。
そうか、そういうことなのか、そうだとすれば、どんなに面白く書いても、万引きを取り上げたまじめな本が売れるはずがない、残念だがあきらめるほかないと納得しようとしましたが、何か吹っ切れませんし、あきらめ切れない。私の推計では被害者、警察その他の関係者約100万人の人(これは、万引犯人として検挙される約7万人に検挙されなかった暗数、その被害者の方々等々を足し合わせたものです。)が毎年万引きに関わりを持ち、複雑な思いを抱いていると考えています。2年、3年と累積すれば相当の人々が万引問題に直面し、あいまいな思いを抱いて過ごしている、それは小さな問題ではなかろうと思うのです。それに、私たちの中には、万引きをしようとしたが思いとどまった、万引きしてしまった、万引きに誘われたという方が数え切れないほどおり、万引問題を忘れられずに、時に暗い気持ちになられる方も多いのではと推測します。
ですから,万引問題を根底から考えるための本にわずかの人間しか興味を持たないとは思えないので、このまま引き下がるのは悔しいし、正しくないとも思いました。それに、底深く広範に堆積している複雑な思いに、光を当てたい、少しは沈黙の人々に憂さ晴らしをさせてやりたいとの感情を断ち切ることができませんでした。どこかで発信してみようと思い。このホ-ムページを活用することにしたのです。もっとも、読む人々は万引に関心のある人が多いでしょうから、私の当初の狙いとはかけ離れたものですし、物議をかもすことになりかねないものもでてくるでしょう。内心では、「厄介なことを、誰に頼まれたわけでもないのに、一銭の得にもならないのに、お人好しもいいとこだ、それでもやるというのか、お前は。ええい、どうにでもなれ、やれるだけやるさ、どうせなら、名前は、「やけくそ万防日記」にしよう、それが私の今の気持ちにぴったりだ、」と思ったのです。
そんなわけですので、ほかに何の魂胆もない、純粋に私の感情の発露だと思っていただいて結構です。読むも読まぬもご自由、ですが、テーマによってこれはこんな方にぜひ読んでいただきたいと私が思う方々がおられます。ですから、店舗の方々、警察の方々、経営者の方々、一般の方々など読んでほしいと思う方々の名前は、冒頭にお示しし、読んだ後にこんなものは俺は読まなくても良かった、時間の無駄だったということのないように工夫したいと思います。
読者の方を通じて、また、その方々と手を携えて、万引問題の理解を広げられれば、私の努力も報われるというものです。
そう考えているところに、1万数千に上る読者を持つセキュリテイナビがこの日記を掲載してくれることになりました。ほぼ同じものを同日に載せてみたいと思っています。
どんなことを書こうとしているかですが、万引問題に関心の強い方はもちろん、ちょっと何が書いてあるの、万引きってそんなに大きなことなのと思われている一般の方も対象としていますので、そんなことは俺はよく知っているよというようなものもあるかもしれません。万引問題は多くの層の方々に広がっているだけに、これに絞ってという言うわけにはいきません。ご理解ください。
ただ、1度この日記を覗いてくださった方々が、次号に興味を持っていただけるように工夫します。それもあってこんなことを書く予定だとあらかじめお知らせしておきます。
まず、万引問題の総論的な話から順次書き進めます。既にかなりの部分を書いておりますので、その表題を次に(予定)として記載しておきます。それらを進める過程で、万引問題に関係するトピックがあればその都度記していきます。その後のことは、それはこれから考えて詰めていきます。万引対策と個人情報保護の問題などは微妙な問題ですが、私なりの見解を詳しく述べる時期が来ると思っています。
また、この日記に、他の方々が参入することも期待しています。万引きの現場はそんな生ぬるいものではないのだ,実態はこうだという店舗の方、万引Gメンの嘆きはこうだというような切実な話や、当機構の関係者が俺にも書かせろというものなども織り込んでいきます。また、読者からご意見やご批判があればそれも反映させていくつもりです。

(今後の予定)
やけくそ万防日記1  万引は些細な問題?万引問題への私のスタンス
やけくそ万防日記2  私は何者、何が私を突き動かすのか?
やけくそ万防日記3  15年前、未開の万防対策に光が!
やけくそ万防日記4  万引をめぐる不可思議な言い分?その1 「万引は犯罪?」など
やけくそ万防日記5  万引をめぐる不可思議な言い分その2 「お客様は神様?」など
やけくそ万防日記6  万引対策の成功事例 私が感激した真剣な取組み
やけくそ万防日記7  映画「万引き家族」から考える。
やけくそ万防日記8  万引犯検挙をめぐるいくつかの問題 店内確保は万引犯にならない?
やけくそ万防日記9  万引犯の警察への全件通報についての議論のたたき台
やけくそ万防日記10 万引きもグローバル化?
やけくそ万防日記11 アメリカ関係者とのボカラトンでの歴史的会議
やけくそ万防日記12 万引対策強化国際会議2017
やけくそ万防日記13 万引防止船「マンボー号」は未踏の大陸にたどり着けるか?2018年新年の私の夢はどこにたどり着いたか
やけくそ万防日記14 究極の万引対策、盗品の処分先を叩く
やけくそ万防日記15 万引防止と経営者の役割
やけくそ万防日記16 全国万引犯罪防止機構の歴史と現在 その組織的課題

やけくそ万防日記トピック1 ロスプリの狙い
やけくそ万防日記トピック2 神奈川県における高齢者万引対策
やけくそ万防日記トピック3 渋谷プロジェクトのこと
やけくそ万防日記トピック4 当機構の毎年実施する小売業調査は何を語るか
やけくそ万防日記トピック5 こんな万引あり?その1
やけくそ万防日記トピック6 こんな万引あり?その2
やけくそ万防日記トピック7 万引Gメンは怒り、嘆く
やけくそ万防日記トピックx 万引きをめぐる様々な話題や当方のイベントその他さまざまな面白いことを随時盛り込んでいく。

次号に続く

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