やけくそ万防日記 トピック1  小売業の労働者を守るためにも万引対策は必要不可欠

思いもかけぬ方が当機構を訪れることは少なくないが、年明け早々、大手労働組合の事務局の方2名が四谷の事務所を訪問されて、私も含め、1時間ほどお話を伺った。
その労働組合はUAゼンセンで、繊維の製造、流通、サービス業等に関わる企業の組合員約180万人を擁する我が国最大規模の労働組合である。その流通部門には、大手のスーパーや540を超えるスーパーマーケット、百貨店、住生活関連ドラッグ関連等の企業の正社員及び短時間労働者約100万人が加盟している。
その事務局員が語るには、組合員の雇用環境を改善するため、これまで、いわゆるクレーマー対策を中心に行ってきたが、その過程で、万引問題で不快な思い、危険な目に合うことが多いという訴えが多々あり、放置できない問題となっているそうだ。万引されるのも悔しいが、捕まえて警察に連れて行っても時間ばかりがかかり、思ったようにはしてくれず、途方に暮れている組合員の嘆きが後を絶たず、そんなことで苦労している組合員を守るのは私たちの責務だとおっしゃる。自分たちとしては、お客様は神様だという考えが残っている中で、必要があれば経営者や関係官庁にも働きかけて、状況を改善したい、クレーマー対策は困難だったが、努力もあって組合員の立場にも世間の理解が広がった、万引問題もそうしたいという趣旨だった。
なるほど、現場の苦労を集約しているところが万引機構以外にもあったのか、労働組合だものな、それは気が付かなかった、労働者を守るという視点には私は立っていなかったな、ロスプリベンションと言っても経営の立場だったかなどの思いが駆け巡った。当機構は、発足以来、小売業実態調査を続けており、その中には、担当者の嘆きや怒りが込められているので、こういう現場を何とかしたいという思いは強かったが、そんな環境の中で働いておられる多くの方々が、嫌な思いをし、時には身の危険も感じ、上司にも理不尽に叱られたりすることもある、そこを助けることは万引対策の目的の一つだとは明確に認識してこなかったと、まず、思い知らされた。
事務局の方は、働き方改革というが、このような状況を改善することもその一つだ、それが嫌で職場を去るという方も少なくない、それを防ぐのは経営者にとっても重要な課題のはずだとおっしゃる。まっすぐな物言いで、いちいちごもっともである。立場が変われば明確に認識できることもあるのだと嬉しくなった。
その彼らが万引対策として当面これが重要だと考えるのは、やはり、まず警察の活用である。被害にあい、また、万引犯人を確保すればすべて警察に届けること、警察は迅速にこれを処理し、適切な罰を加えることである。それは組合員の意向を反映したものでもあろうし、至極当然であるが、それがそう簡単にいかないところが万引対策の難しさだということを私も説明せざるを得ない。刑事司法の限界、警察の立場、店の事情等々、すんなり、すっきりいかないことが多々あり、問題をあいまいにして対処方針を明確に立てられない現場が多いため、多くの従業員は、暗い気持ちで萎縮しているのが現状だ、お客様は大事にしないといけないと日ごろから言われているから、トラブルはできるだけ避けようとする、それが万引犯人をつけ上がらせる、忙しいから確保してもその場で注意して終わらせてしまうことが多く、それがまた万引を助長するといった現場の実情をあれこれご説明する。彼らもうなずくことが多い。
私は、彼らのやる気をそごうとしているのではない。この問題の難しさを共有し、私たちと”ともに“万引問題と戦ってほしいと心から願うからだ。そこで、私は彼らに、当機構の法人会員にすぐなり、我々の会議にできるだけ参加し、広範で深い万引対策の一つ一つを知ってもらいたいとお願いした。組合員にとって、万引対策は簡単ではない理由はここにあり、何とかしたいと考えている人は少なくないこと、現在、万引問題でこのような対策が講じられており、その効果はこうだ、現場でやるべきことはこういうことだと種々事情を知らされてこそ、少しはすっきりして対処できるのだろうからと申し上げたのである。彼らもその方向で組織として対処することを約束された。
考えてみれば、当機構には、発足の当初から、10を超える小売業団体の方々が中心になって出来上がった組織だ。それらの団体は性質上、経営側の意向を反映して動いていく。そのためもあったのだろうか、言われてみれば、有効な万引対策が現場で働く方々のためでもあるという、簡単なことに気が付かなかった。私は、新年早々、大きな贈り物をもらった気持ちである。万引対策の前線に、有力な同志が新たに加わった、百万の援軍が登場した、そんな気持ちである。

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