やけくそ万防日記13 万引対策強化国際会議2017

アメリカで私が感じたことを日本の小売業者の方々と共有したいと思い、いろいろやりましたが、なかなか広がりません。そこで、日本で同じような会議をやって多くの方々に直接聞いてもらうのが早道だと考え、国際会議の準備を始めました。なかなか大変でした。大変なことは一つだけです。必要なお金を集めることです。いろいろな小売業の団体に協力を求めましたが、期待したような協力はなかなか得られませんでした。信じられない思いでした。ほかでもないあなたたちにとって有用な会議を我々が準備しているのに。それはわかっていますが、自分たちには、特段の協力はすることはできませんとか、あなた方は金を無心に来ているのですかと言わんばかりの対応をする団体も少なくありませんでした。腹立たしいことです。業界団体とはこういうものなのかとあきれることも少なくありませんでした。前例踏襲主義にとらわれず、新しいことに即応して対処してくれることを願うばかりです。悪口を言っているのではありません。難しいこともあるのでしょうが、多くの団体にもっと真剣に万引対策をしてもらいたいと思うからこそ、そのように言っているということですから、誤解なきようにお願いします。
それでもいくつかの団体や個々の事業者、個人のご協力を得て(そのお名前をこの末尾に記載しておきます。)、何とか1千5百万円余のお金を集め、また、日本経済新聞が主宰するセキュリティショーの場をお借りし、東京ビッグサイトにもご協力いただき、多くのボランティアのお力を借りて、2017年3月9日及び10日の大会の開催にこぎつけたのです。その冒頭次のように私は挨拶しました。

「皆さん、おはようございます。北は北海道から南は大分県まで、遠方からの方も含め、また、事業者、警察はじめ関係官庁、有識者等々多くのフィールドの方々にお越しいただき、嬉しく思います。
さて、この会議は、万引問題を憂える多くの方々のご支援、ご協力の上に成り立っています。セキュリティショーの場をお貸しいただいた日本経済新聞社をはじめ、ご協賛いただいた事業者、団体、個人、また、汗をかいていただいた方々など、数多くの方々の献身的な貢献があってこそ、今日に至ることができたと、心から感謝申し上げます。
そして、何より、はるかアメリカ各地から駆けつけてくれたゲストの皆さんに、敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
ところで、私たちは、おそらく一人残らず、万引問題に苦しめられ、怒りを持ちながらも、あきらめや敗北感にさいなまれてきました。その姿は、あたかも悪魔の影におびえながら、孤独な戦いを強いられているやせ細ったヤギの群れを想起させます。
しかし、私たち人間には、苦難に抗する意思と知恵があります。孤独な戦いから、ともに戦うことへの大きな転換を可能にすることができます。この先例は、アメリカにありました。そしてわが国でもその萌芽が育っています。被害者である事業者相互はもちろん、警察はじめ関係行政機関、地域の方々などが、「ともに」万引問題を解決するこれまでにない力を作り出すことが、今、我々に求められていると思います。
この会議は、そのための第一歩です。多くの情報を共有しましょう。そして、万引問題に有効に対処するための具体的方策を探り出し、我々の共通認識にして、今後の取り組みに生かしましょう。そのキーワードは、あくまでも、「ともに」です。
最後に、改めて、多くの方々のご協力に感謝を申し上げ、私の挨拶とします。」

(会議の成果)
この会議では、1日半にわたり、活発な意見交換が行われました。500名の方々が参加されました。私は長く公務員をし、また、この種の会議に参加してきましたが、これだけの規模の会議をたった1千数百万円で、気持ちよくやりぬいたことを知りません。
この会議の冒頭、つい2週間ほど前にマスコミで話題になったメガネ王の社長さんにお話いただきました。相川翔の宣伝するめがねを万引されたことに腹を立てた店員が、防犯カメラに映った犯人の顔をモザイク付きでウエブ上に公表し、返さなければモザイクをはずすぞとやったのです。マスコミの論調はそれはやりすぎだというものでしたが、店の言い分も伝えていました。
当機構は、この問題で「やり方には賛同できないが、その気持ちは大いにわかる、やり方を工夫しよう。」というものでした。その前後に、2つのコンビニでも似たようなことがあり、話題になっていました。そのコンビニの関係者は、「とんでもないことをして店の信用が損なわれかねないと強く指導した。」という趣旨のことを述べておられましたが、少し違和感を覚えていました。どうも万引きで話題に上ることすら店の信用に関わるとでも思っておられるようで、メガネ王の社長さんとは大違いだな、現場の感覚は間違っていないのに、別に新たな防止対策でも教えてあげたわけでもなかろうに、叱られた店員も気の毒だな、と思ったことを覚えています
アメリカから来ていただいた小売業のロスプリベンションの専門家ら5人の率直な発言とこの議論に加わったパネラーや参加者一人ひとりの熱心な対応により、本当に面白い、意義のある会議になりました。その様子の一から100まで、「万引対策強化国際会議2017 報告書及び提言」と題する冊子(http://www.manboukikou.jp/pdf/situation386.pdf)にまとめています。それをご覧いただけばよくお分かりいただけると思うのですが、ここでは会議をまとめた文書を紹介しておきます。多くの内容を短い文章にまとめましたのでわかりにくい部分もあるかと思いますが、じっくりお読みいただければ意図するところをご理解いただけると思います。
これに基づいて、当機構の活動は大きな転換をしていきます。次回にはそれを端的に示すものを紹介します。

2017 年 3 月 10 日

万引対策強化宣言

「万引対策強化国際会議 2017」に参加した私たちは、万引が小売業者の経営を圧迫するほどに重要な経営課題となっていること、わが国が誇る安心・安全を脅かしかねない重要な社会問題である
ことに思いを致し、また、アメリカにおける万引防止対策から多くを学び、小売業者、警察、防犯関係事業者、関係機関等万引問題の関係者が連携をいっそう強化するとともに、ソフト・ハード両面で、新たな発想で対処すれば現状を打破できるとの確信の下、下記の事項について全力で取り組むことを宣言する。

1 小売業者の万引対応力強化 万引問題に苦しむ小売業者が、孤立せずに、多くの関係者とともに万引対策に取り組めるように、小売業関係団体・全国万引犯罪防止機構等は、小売業者との連携をこれまで以上に強め、有効な手法、機器の紹介、犯罪情報の速やかな伝達、職員の研修を提供する等して小売業者をサポートする。また、小売業者は、万引被害減少を重要な経営課題ととらえ、ロス管理の徹底と万引実態の把握、有効な防犯機器の導入等により万引きしにくい環境づくりを進める。そのため、万引対策担当の専門部署を設置するなど、社を挙げた取り組みを強化する。
2 被害情報及び犯人情報の共有・活用 関係小売業者、団体等が不断に情報交換を行うとともに、防犯カメラ画像の相互利用を含め、この有効、適切な利用拡大に努める。特に、顔認証システムを活用した新たな万引情報共有・活用システムを早急に構築するよう、関係団体、全国万引犯罪防止機構等が本格的な準備を開始する。これらの方策で得られた、組織的、常習的その他の重要万引事犯の万引情報については、全国万引犯罪防止機構等を活用しつつ、警察等との連携による検挙・抑止を一層推進する。
3 地域別、業態別等の万引対策会議の定期的な実施 小売業者、警察、地域社会等が参加して、万引情報の交換を定期的に行うことにより、多数の関係者が力を合わせ、社会全体の万引防止の機運を高め、万引の抑止力強化につなげる。
4 万引した商品の転売防止対策の強化 警察を中心に、国内外の盗品処分先やルートを解明し、換金目的の万引抑止を図る。インターネットオークション、フリマアプリ、宅配便などの関係事業者の協力を得るなどしてこれらが処分ルートとして利用されない仕組みづくりを進める。
5 再犯防止教育の充実等 少年、初犯者等、万引犯人のうち刑事責任を負わない者や負わせることが困難な者に対する再犯防止教育を格段に充実するとともに、高齢者による万引防止の新たな取組みを早急に開始する。
6 万引犯に対する民事責任の追求 被害者サイドからの損害賠償請求等金員の支払いを要求する取り組みを拡充し、また、これを容易にする仕組みづくりを進める。
(この会議にご協賛いただいた方々)
日本万引防止システム協会、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合、グローリー株式会社、株式会社マルハン、株式会社ユニクロ、日本電気株式会社、パナソニックシステムネットワーク株式会社、一般社団法人日本自動車用品小売業協会、一般社団法人全国警備業協会、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会、LYKAON株式会社、株式会社集英社、株式会社セブン&アイHLDGS、株式会社小学館、株式会社ポプラ社、一般社団法人インフラセンター、株式会社トーハン、日本出版販売株式会社、一般社団法人日本雑誌協会、株式会社三洋堂書店、一般社団法人日本書籍出版協会、ウエルシア薬局株式会社、株式会社日本保安、高千穂交易株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社、株式会社講談社、岩手県万引犯罪防止協議会、山村秀彦、株式会社幸栄企画、日本チェーンドラッグストア協会、株式会社エイジス、一般社団法人ロスプリベンション協会、株式会社ジャパンプロテクトシステム、アクシスコミュニケーションズ株式会社、株式会社三宅、株式会社チェックポイントシステムジャパン、セフト株式会社、日本ファシリオ株式会社、日本レコード商業組合、株式会社力匠、一般社団法人東京都警備協会、一般社団法人ドゥ・イット・ユアセルフ協会、株式会社三省堂書店、株式会社エムアールビジネス、阿部豊、株式会社SC保安警備東日本、コミー株式会社、渥美六雄
(敬称省略)

 

 

 

 

 

 

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