やけくそ万防日記14 万引き問題と経営者の役割

アメリカの万引対策と我が国のそれとの大きな違いは、この問題での経営者の関与の度合いです。既に書いてきた通り。ロスをいかに小さくするかは経営者の責任問題として株主に説明責任を有する重要な問題となっているのがアメリカで、そうはなっていないのが日本です。そういうと気分を害する方もおられると思いますが、それでは次の文をお読みください。

「1 あなたの会社の万引被害についてよくご存知ですか?
担当者に以下の質問をしてみてください。
ア ロスがどれぐらいでそのうち万引被害はどの程度?ここ数年増えているのかどうか?どんな商品が万引きされているのか、それはどのように処分されていると思うのか?犯人はどんな人間か?常習者はいるのか?最近新たな状況は生じていないか?
イ 万引対策はどのように行っているのか?体制は?従業員への教育は?防犯カメラなどの設置状況は?警察との関係は?他の事業者と協力しているか?被害情報や犯人情報を共有する仕組みはあるのか?
ウ これまでの対策は有効だったか?課題は何か?
エ 対策を講じる上で、迷いや躊躇することがあるか(例えばお客さんに失礼にならないか?万引きがあると世間に知られると店の信用に関わらないか等)?

2 万引問題についての経営者のスタンス
自社の万引問題をよく知ったうえで、どの事業者もその商品がハゲタカに狙われていることを前提にして、次のスタンスを堅持することが重要。
ア 「お客様は神様」は昔の話。万引犯人は笑っている。大多数の善良なお客様を守る上でも、万引犯には厳しい対応を。
イ 万引きは企業のリスク、恥ずかしいとか言っていられない。また、対策を強化するのは当然のことで、自分のものを盗られそうになっているのに何もしないほうがおかしい。顧客は大半良くわかってくれるから、万引対策をしていることは隠さなければならないようなことではない(多くの従業員はこの点で経営者の考え方を知りたがっている。)。
ウ 万引は最近大きく変わっている。少年の初発方非行中心から高齢者による常習的万引、外国人による組織的万引が増えており、また、盗品の処分ルートとして国際宅急便、インターンネットオークション、SNSなどを利用するものが増加しており、万引きという言葉が持つ出来心的な犯罪はもはや昔の話となっている。
エ 万引対策を警察任せにはできない、施設内の犯罪は施設管理者が第一次的に抑止対策を講ずるべきもの。被害者に負担をかけるのはおかしいという意見は何も生まない。万引は軽微な犯罪として取り扱われることが大半。自分の物は自分で守るほかない。そうは言っても、警察を活用することは抑止のために有効。万引犯を捕まえて現場で注意して済ませていては、彼らを喜ばし、この店は甘いと評判が立つだけ。警察に連れて行き、いやな思いをさせるべし、特に常習者になる前の犯人には一定の抑止力になる。
オ まじめな従業員ほど、万引問題で悩み、苦しんでいることを知るべし。万引対策は働き方対策の一つと心得るべし。

万引防止は簡単ではない。全社が大いなる関心を持ち知恵を出すとともに、多少の投資が必要であるが、うまくやれば経営面で収穫が期待できる。また、面白い話ではないが、経営トップが関心を寄せてこそ有効な対策を打てる。

3 社内体制を確立する
万引対策に対する基本的投資として、経営トップが決定すべきは人的課題。
万引問題は複雑、専門的知識を持った優秀な職員を含む担当部署の設置が必要不可欠。
この部署が経営トップに直接報告し、指揮を仰ぐ仕組みとなることが必要。
全店舗にそれぞれ責任者を配置し、これと迅速に被害情報等の交換できる体制を確保することが必要

4 社としての能力向上
以下の対策を講じることを指示、徹底し、「万引しにくい店」との評価を定着させる。
ア 担当者の能力向上のための専門的な研修機会を設ける。
イ 全従業員の研修の機会を設ける。
ウ 対策マニュアルを策定し、社内で徹底を図る。
エ ハード面での充実を図る。
オ 警備員等の活用を検討する。
カ 顧客に対する声かけ、商品配置の工夫等ソフト面での充実を図る。
キ 社内外で、万引被害及び犯人情報の迅速な共有を図れるシステムを採り入れる。
ク 警察や地域の関係者との情報交換、連携を強化する。

これらの経営トップからの指示に際して、担当者が躊躇し、あいまいになっている門題をクリアーにすることが重要。例えば、店内での顧客に対する声かけのあり方、万引きと疑わしい者を発見した時の対応の在り方、万引犯を拘束した時の警察への引渡しのあり方、他の事業者との万引情報の交換のあり方、顔認証システムの導入如何等々。

5 全国万引犯罪防止機構を活用する。
万引対策は各社ごとに推進しても効果が上がりにくい。多くの事業者が足並を揃えてやってこそ力になる。経験があり、多くの情報を持っている専門家を利用するよう指示されたい。
NPO法人全国万引犯罪防止機構はその意味で格好の組織である。当機構の会員となって、その活動の詳細情報を収集するとともに、困りごとを相談することは、担当者のやる気と能力を向上させることになること請け合いである。

6 万引対策強化は企業価値の向上につながる
投資とその効果を見極めつつ、適切な対策を講じることで、社内に良い緊張感と愛社精神が高まるとともに、ブランドを守り、企業としての質の向上につながる。さらに、万引問題は社会問題であるので、この解決に貢献する社会貢献活動でもある。」

いかがでしょう。万引問題は部下任せにしておいてよい小さな問題でしょうか?

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