やけくそ万防日記19               今年の万防機構総会は万引防止の明るい未来を照らした

 

 

 

 

 

 

去る6月18日、いつものように四ツ谷の主婦会館で、すべてといってよいぐらいの様々な業種の小売業関係者、警備業者、警察、東京都をはじめ多くの官公庁関係者、マスメディア、弁護士等々で満杯の会場で、2時間40分にわたる会議が開催されました。
まず、会員による総会が行われ、昨年度、本年度の事業、決算、予算に関する議題が審議されました。その特徴は、今年も引き続き、2017年の国際会議で採択された万引対策強化宣言の6項目に沿って、さらに活動を充実させていくこと、そのために必要な経費を当機構の特別会員を増やすことなどで何としても確保することという切迫感あふれる内容であったことです。異議なく承認されたのですが、目標を達成するために会員の理解と努力が必要である旨、樋口副理事長からも指摘がなされました。
会議後、最近の万防機構の活動は目覚しく拡大されましたねと言われましたが、これからですよとお答えしました。この日記をお読みになった方々を含め、多くの方々のこれまでにない大きなご理解とご支援次第だとも申し上げました。
さて、総会の後、当面する万引対策検討会として、5項目の報告をしました。そのうち3つは、被害者間での万引被害、犯人情報の共有と活用に関するものです。この共有、活用のあり方には、今のところ、3つの方法が実施、検討されていると思います。
一つは、顔認証機能を利用したものです。この日記でも紹介したことがありますが、渋谷プロジェクトと言う名で、渋谷区内の複数の書店がそのスタートの間近にいるものです。既に、詳細なガイドラインが策定済みで、タイミングを見てスタートするので、期待してもらいたい、その際に詳細はお知らせすると私から説明し、ここまでに至る経緯とそこで問題になった事項をいくつかお話しました。皆さんは、本当にやれるのかと言う面持ちで聞いておられるように感じましたが、それもそのはず、何度もそう遠くないうちにと聞かされ続けたのですから。このプロジェクトに関わってきた者は皆、ここまでエネルギーを投入してきたプロジェクトをお蔵入りさせるようなことはあり得ないと考えており、今しばらく見守ってほしいこと、また、スタートした際には心無い非難も生じうるので、皆さんのご支援をお願いしたいとお話しいたしました。
二つは、個人情報に当たらない万引被害、犯人の情報共有、活用システムです。既にチェーンストア協会が取り組まれているもので、事業者の枠を超えた迅速な情報交換により、万引を防ごうというものです。このシステムの開発は、当機構が既にこの7月の完成を目途に進めているところです。実は、いくつかの大手事業者から、中部地区で多発している外国人による大量万引は、業界の壁を越えた対応が必要だと言う強い訴えがあり、昨年末から、当機構が加わって、月に1回程度の情報交換会議を持ってきたのです。やはり、同じと思われる犯人グループが業種を超えて犯行を繰り返していることがわかってきました。関係の情報交換を進める中で、このような会議を持って情報を得ても、後追いになりがちだから、もっと迅速に情報交換できるシステムを作り、広く参加企業を募ることが必要だと言う共通認識が作られてきました。
確かに、顔認証機能を利用する情報交換は大きな効果が期待できるのですが、まだ、顔認証カメラを設置するには、財政面でも、事業者内での合意形成の面でも時間がかかることが予想される中で、今役立つ仕掛けは、人の目を頼りに、わかりやすい犯人情報を迅速に交換し合って、少しでも被害を減少させることのできるものです。
この日は、この会議に参加してきた主要メンバーであるユニクロのロス対策責任者が状況を説明し、私と、当機構の稲本次長がその内容を説明しました。もちろんまだ、検討段階ですが、既にガイドラインの詳細な案も策定済みで、早期にスタートさせたいと考えています。システムを完成するとともに、このシステムを利用して地域ごと、あるいは業種ごとなどにプロジェクトが作られていくことを想定しています。全国津々浦々で、このシステムが活用されていくことを想定して、まずは中部地区でのプロジェクトを立ち上げたいと説明しました。
これに対する反響はかなりあったのですが、やはり、論より証拠、やって見せることが必要です。ここでの大きな課題は、異なる事業者に万引被害の情報を提供することへの躊躇です。アメリカの大手スーパーが「商売は競争するが、万引対策は協力する。」と商売敵と万引対策を連携して行っているのですが、これをわが国でも実現できるか、大きな転換点に立っているように思います。参加事業者が誠実に、迅速に有用な情報を他の事業者に提供できるかがこのシステムを使ったプロジェクトの成否の鍵を握るのだと説明しました。
3つは警察を中心にした、被害、犯人情報の共有、活用の仕組みです。先駆的な取り組みをして成果をあげてきた福島県警の生活安全の担当補佐が詳細を説明してくれました。同県内の多くのドラッグストアーが県警の呼びかけにこたえて、被害や犯人情報を最寄の警察署や本部に直接提供し、これを県警が事業者ごとに基幹店舗に連絡し、そこから関係店舗に情報がもたらされる仕組みです。この仕組みを取ったから大量万引き事犯が激減したかどうかははっきりしませんが、万引きしようとして買い物籠に入れたものが置き去りにされた事例が目立ち始め、これは情報をもたらされた店舗の従業員が警戒を強めた結果と見られると説明がありました。
警察が防犯上の必要性からこのようなシステムを考え出し、警察から被害者に働きかけ、これに被害者の多くが呼応して情報を交換し合うと言うのは、警察もたいしたものですね。おそらく何人かのアイデアと情熱が状況を作り出したのでしょう、嬉しい限りです。一方で、警察が中心になるので情報を出しやすいはずなのですが、それでもこの仕組みに乗ってこない事業者が厳然としてあると言うことも報告されました。その理由が、自分たちの系列 店舗内での対応で十分だと言うことを挙げておられるそうですが、本当にそうでしょうか?現場の悩みを知らない本部担当者の教条的な対応が推測されます。もう少し時間がかかるかもしれませんが、事態は着実に動き始めていると考えてよいでしょう。その後の報告で、このほかにも、北陸3県の警察や岐阜県警でも同じような取り組みが始まっているようです。全国で同様の取組みが広がっていくことを期待したいですね。
この後、インターネット利用の処分市場の実態と対策を当機構の若松理事から報告しました。不正な取引をインターネットの世界からどう排除するか、ヤフーやメルカリと当機構が、警察と連携しながら、ひざ詰めで検討していることが報告されました。警察との協力の在り方、不信サイトの発見、万引被害品との確定の方法等々課題は多いのですが、佳境に入っているなと言うのが私の感想でした。
最後に、光眞当機構事務局長代行から、当機構に入って約4か月半、元警視庁捜査1課長の見た万引き問題が話されました。検挙と防犯のバランスの重要性がわかったこと、また、警察内部でさえ万引問題の理解度の低さを実感するとともに、万防機構の知名度のなさを痛感したと話されました。彼は現場を大事にする方で、そのエネルギッシュな動きと率直な物言いが硬直しかかっている警察、小売事業者の壁を取り払うことに大きな役割を果たしてくれるのではという期待を持たせてくれました。
この会議には、警察庁生活安全局長、警視庁副総監、生活安全部長、経済産業省小売業担当課長らが参加してくれました。
彼らの期待にもこたえて、当機構を発展させたいと決意を新たにしたところです。
なお、当機構のホームページに会議の模様がアップされています。
最後に、このサイトでお伝えするやけくそ万防日記はこれが最後になりそうです。書きたいことは残りわずかなのですが、それは当機構のホームページでお伝えしますので、お付き合いいただければ幸いです。

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