一般的には知られていない画期的な技術の紹介を紹介し、小誌でも指折りの人気企画となっている『技術の夜明け
耳寄り情報室』。毎回の掲載後には大きな反響が寄せられており、業界内外を問わず大きな注目を集めている。今回紹介を行うのは、超音波センサーをシート状にした技術で、大きさや形状などを自由にデザインできる。建材として用いることが出来ればカメラなどの装置も不要になるなど、大幅なコストカットが期待できる。
ナノテクノロジーを利用しセンサーのシート化に成功 今回紹介を行う技術は、東京大学工学系研究科 電気系工学専攻・染谷隆夫教授の研究グループが基礎開発に成功したシート状の超音波変換素子である。
ナノテクノロジーを応用して超音波センサーをシート状にしたもので、シートから超音波を発し、空間の物体に反射させることで位相の差を計測し、物体の数量や形状、距離などを計測する。
シートであるため、大きく広げることにより計測エリアを無限大に広げることも可能。 また平面や曲面など、形状についても自由にデザイン出来るようになるのである。
日本の高度な印刷技術を応用することで、最終的にはロール紙など“建材”として商品開発を行うことも可能になるだろう。 もし建材として実用化されれば、屋外の外壁や部屋の壁紙、さらには天井、床材などがすべてセンサー化でき、現在使用されている人感センサーや火災報知器などの役割を担わせることも可能になる。
表面処理もクロス材のように様々な絵柄や色を自由にプリントすることも可能になるので、違和感なく設置することができ、その建物の内部、あるいは周辺にどれだけの人数がいるのか、またどのような状態にあるのかを把握出来るようになる。
死角なく全体をチェックIT家電との連動も可能 応用方法もまた無限となる。 たとえば車内の内装として使用することにより、居眠り運転の早期発見を可能とし、事故を未然に防ぐことも可能になる。 すでに心拍・心電などを用いて居眠りを判定する技術が用いられているものの、心臓部などに装置を当てる必要があるなどドライバーに負担をかけてしまうという問題があった。 内装としてセンサーを使用できれば、以上の問題も解決可能となる。
また、一人暮らしの人の在宅での見守り機能としての応用も可能だ。 タグなどを持たせる必要がなくなるほか、シートをフリーセンサー(自由にカットができるセンサー)にすることが出来れば施工を行う上でも業者の手間を大幅に省くことが出来るため、導入も容易となる。
建物の外周監視についても、監視カメラの場合にはどうしても死角ができてしまうため、複数の設置が必要だったが、この技術であればシート全体がセンサーであるため、外壁に用いることで隙間なく全体をチェックできる。
既存技術である温度センサーなども組み込めれば火災センサーとしても応用できる。 無論、IT家電など温度調整が必要なシステムにも活用可能で、技術を有効に使える範囲もさらに広がる。
まだセンサーの解像度が低く、精度や通信距離の問題も残っているが、建材としての使用であればそれほど高い精度を必要としない。 使い勝手やコストダウンなどのメリット面が見込めれば大きな反響を呼ぶだろう。 関心を持たれた方はぜひともお問い合わせいただきたい。
情報提供者 石田 益朗氏 特定非営利活動法人MiTTS(医療情報・ 安全管理・教育システム推進協会)理事
月刊「安全と管理」2009年7月号掲載 |